取締役副社長
景山 均
楽天にて、楽天グループのデータセンター・ネットワーク・サーバーなどのインフラや、IDサービス・スーパーポイントサービス・メールサービス・マーケティングDWH・ネットスーパー・電子マネー・物流システムなどの開発を統括。その後、ニトリのIT、物流システムの責任者を経て、2019年6月にトヨタファイナンシャルサービスに入社。デジタルIT部隊の立ち上げをゼロから実施。2021年4月より現職。
KINTOテクノロジーズは2021年4月の設立当初から「内製開発」をテーマに掲げてきました。組織の立ち上げを先導してきた景山さんはなぜ、当社を内製開発組織にする必要があると考えたのでしょうか?
景山:トヨタグループが競合他社に負けない事業展開を行っていくためには、スピード感が最も大切になると考えたからです。
KINTOテクノロジーズはもともと、トヨタファイナンシャルサービスにあるGlobal KINTOのヘッドクオーターのIT部門でした。当時は組織内にIT開発部隊を持たず、ベンダーに外注する形でプロダクトやサービスのリリースを行っていました。しかしながら、そのような体制の下では、大規模な開発でなくても、計画からローンチまでに1年ほどを要するケースが少なくなく、スピードの遅さがグループ全体の事業のボトルネックになっていました。
私がトヨタファイナンシャルサービスに入社したのは、現KINTOテクノロジーズ代表取締役社長の小寺さんから「優秀なIT部隊が必要だと考えている」と相談されたことがきっかけです。内製開発組織の必要性は、経営層や幹部の共通認識だったのだと思います。
――0から内製開発組織を作り上げていくことには苦労も多かったのではないかと想像します。
景山:優秀な人材を組織に引き入れるためには相応の待遇を用意しなければなりませんし、開発自体にも多くのコストがかかります。肝煎りの案件とはいえ、現場レベルでは、内製化に対する理解が十分に得られているとは言い難い状況もありました。
一方で、0から組織を作っていくことにはやりやすさも感じていました。私の中にはかねてから“理想のIT組織像”があったため、その目標に近づくためにどのように動くべきなのかをいつも考えていましたね。キャリアを通じて、さまざまな企業や組織で業務を行ってきたこともプラスに働いたと思います。私が入社してからの約5年で、KINTOテクノロジーズは約330名のエンジニアを抱える組織になりました。
KINTOテクノロジーズの設立当初、景山さんが描いていた理想はどの程度実現できていますか?
景山:まだ道の途中ですが、少しずつ成果が現れ始めています。「求める人材が集まり、組織としての形ができてきたこと」「設立以来、重点的に取り組んできた上流工程の効率化に、昨年で目処が立ったこと」の2点は特筆すべき材料だと感じていますね。計画からローンチまでに必要な期間は、半年ほど。従来は1年かかっていたので2分の1まで短縮されました。今後は開発現場の生産性向上に取り組んでいきたいと考えています。
――開発現場の生産性向上について、現時点で考えていることはありますか?
景山:たとえば、エンジニアが企画や設計といった上流工程をリードできるような仕組みを構築できれば、より推進力のある組織となれるのではないかと感じています。開発の分野には、プロダクトとサービスの機能や仕様が現場の感覚に耳を傾けないままに決められてしまいやすいという悪習があります。そのようなケースでは、設計どおりにコードを書くことで構造が複雑となり、不具合が発生しやすくなったり、アップデートが大変になったりするデメリットが起こり得ます。だからこそ本来は、現場のエンジニアも一緒になって機能や仕様を決めていく必要があるのですが、全体の効率性から改善を見ないまま、フローとして定着してきました。
最近では、企業が外部パートナーのキーパーソンを社内に開発責任者として迎え入れ、開発の効率化を目指す事例をよく耳にします。KINTOテクノロジーズは内製開発組織ですから、内外の連携を強化することで容易に同じ状況を作れると思います。
――同様の考え方で開発の効率化や高速化に取り組んでいる企業は多くあると思います。しかし、実際には青写真どおりに事が運んでいないケースも少なくありません。そのような例と、KINTOテクノロジーズの組織づくりのあいだには、どのような違いがあると考えていますか?
景山:「現場のエンジニアがビジネス全体を見通せる位置にいるか」だと思います。世にある多くのプロジェクトは、MVPモデルで進んでいるケースが多く、開発工程の中心となっているのは、エンハンスやアップデートなどの改修です。そのため、プロダクトとサービスが現場でどのように使われているのかを正しく把握できなければ、焦点のぼやけた開発となってしまいやすいのです。私が過去に在籍していた企業でも同様の問題に直面し、大規模なシステム変更が頓挫したことがありました。そのケースでもボトルネックとなっていたのは、エンジニアが社内の業務に精通していないことでした。
KINTOテクノロジーズのエンジニアは、グループ各社のすべての業務を知れる立場にいます。だからこそ、そのような環境に置かれている利点を活かし、開発に取り組んでいかなければなりません。上流に事細かに要件定義してもらい、そのとおりに手を動かすような現場では、内製開発組織である意味があまりありません。「ここだけ決めてくれれば、あとは不都合のないようにこちらで構築します」となるのが理想ですよね。これこそが私が思い描いてきた内製開発組織の姿です。
――その実現のために、各エンジニアにはどのような姿勢が必要になると考えていますか?
景山:最も大切なのは主体性でしょうね。グループ各社のプロダクトやビジネスを知る「主体性」。新しいテクノロジーを自発的に学ぶ「主体性」。こうした性質が結果的にエンジニアの技術レベルを上げていくのだと思います。
KINTOテクノロジーズの開発環境には、最新のクラウド技術やツールがすべて導入されています。また、懇親会などのネットワーキングイベントや業界カンファレンスへの参加を通じ、感度の高いコミュニティとつながっていく機会も積極的に創出しています。これらはすべて、トヨタグループ内の内製開発部隊として世界で戦っていくための環境づくりと言えます。過去には一連の取り組みを評価され、開発生産性が優れたエンジニア組織を表彰する「Findy Team+ Award 2023」 にて「組織別部門(Large Div.)」に選出されました。
用意されている環境を有効活用できるかは、一人ひとりの意識にかかってきます。設立当初からのテーマである開発のスピードアップには、あらゆる角度から貪欲に取り組んでいきたいですね。
KINTOテクノロジーズと景山さんの理想とする内製開発組織像との間には、現時点でどのくらいの距離があるのでしょう。
景山:設立当初に比べれば、組織のベースができ上がり、目標としてきたことの実現には近づいています。が、私の理想とはまだ大きな開きがありますね。そのためには優秀な人材がまだまだ不足している現状があります。
――景山さんはどのような方に組織に加わってほしいと考えていますか?
景山:高い技術力と顧客視点を兼ね備えた方だと心強いですね。私たちは一線級のIT企業と技術的に渡り合えるだけの組織になることを目指していますが、彼らのようにテックカンパニーとして事業を展開しているわけではありません。あくまでもトヨタグループの内製開発部隊として、コンシューマーとの接点をサービスで創出する役割を担っています。
トヨタグループがモビリティカンパニーへと変化する過程で、絶対に必要になるのがKINTOテクノロジーズの存在です。グループ各社とエンドユーザーのあいだの橋渡し役が私たちなのです。だからこそ、高い技術力と顧客視点をもって、コンシューマーのためのプロダクトやサービスづくりをリードしていかなければなりません。豊田佐吉さんが豊田自動織機を創業し、豊田喜一郎さんが繊維の会社を自動車の会社へ変えました。それと同じように、トヨタグループはモビリティカンパニーにモデルチェンジしなければいけません。その過程にいる今、KINTOテクノロジーズには、その実現を加速させる役割が与えられているのだと感じています。
同時に、KINTOテクノロジーズには、内製開発組織のモデルケースになっていかなければならない使命もあります。一瞬でも足を止めれば、後続に追いつかれてしまいかねません。トップランナーであり続けるために、たゆまず挑戦を続けていく。高い技術力、顧客視点を兼ね備えつつ、このようなマインドにも共感する方が加わってくれると、私の理想とする組織にさらに近づけるような気がしています。
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